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2章 9

作者: 深田あり
last update 公開日: 2026-07-07 20:24:56

 夜の仕事をひとしきり確認し、九時。使用人たちも全ての仕事を終え、就寝となった。

 聖子は薄暗い廊下をてくてくと歩きながら横にいる俺に声をかけてくる。

「なるほど、兄者は流れる石のようだよね」

「だろう? でも俺関係なくね?」

 しかし聖子はそんな俺の質問を無視し、違う質問をぶつけてくる。

「現状そのサトラレ征伐って何回成功したの?」

「一回。チキンライス作った時だけだ。中々タイミングがないんだよ。俺は日中は学校あるし、七岸さんは一人じゃ心の中で色々考えてサトラレが発生してしまう」

「ふんふん。なるほどね。で、しばらくの間サトラレを我慢すると霊が小さくなると」

「そうだ。しかしどうしたらいいものかね?」

 聖子はかりっと爪を噛むと、思案顔で窓に映し出される月を見つめる。

「ふーん。考えてみるよ。あ、そろそろ寝る時間だ」

 月の位置でわかるんかい。とはいえ聖子に出来て俺に出来ないのは何か癪だったので俺も月を見て、知ったかぶりをする。

「おお、もうこんな時間
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  • サトラレメイド   4章 サトラレの謎と最後の戦い 1

     さつきさんの体、もといサトラレに異変が生じ、俺たちは急遽東京へ戻ることにした。 これは山口ではまだ研究所が関係しておらず、新聞社や雑誌社、精神科医の心に幾許かの疑いが残っている場合、すっぱ抜かれたら大変だからである。   さつきさんの将来を考えた場合、山口でコトを治めるのはどう考えても危険だった。 たとえサトラレを征伐できたとしても、彼女はそれからも何十年と生きていかなければならない。今日だけどうにかすればいいわけではない。   そう考え、俺や鈴子さんのお膝元である東京でなら情報統制もしやすいし、医療機関も充実している。山口はにぎやかな所だが、東京ほどではない。帝都とまで呼ばれるにはワケがある。   彼女から放たれている念波が周囲に拡散するリスクはあるが、それは山口にいても同じこと。むしろ人が多い方が隠しやすいのだ。   さて、以上の理由によって東京に向かうこととなったわけだが、ここに問題がある。   どうやって帰るかということだ。   まさか山口から東京まで悠長に歩いて行くわけにいかないし、自動車なんて誰も持っていない。いや、入地家もしくは市川電機本社に行けば流石にあるが、そんなもん呼び寄せる時間もない。   従って、汽車以外に帰る手段がなかった。   汽車。つまり駅を経由する。人がいる。さつきさんのサトラレが彼らを襲う。   この問題をどう解決したかというと―― 「誠二さん、一等車を貸し切ったわ」   鈴子さんの無敵の権力にあやかるしかなかった。   彼女はまず東京までの路線を独占した。さらに警察を動員し、乗客たちを強制的に追い払った。日本は法治国家ではなかったのか? という疑問すらわき起こる強権である。   とはいえ、今はそんな彼女が凄く頼もしい。 「さ、流石だね鈴子さん。取り敢えず、行こう、さつきさん」 「う……く……う……」   俺の肩に抱かれるさつきさんはまともな返事もできず、苦しそうにうめき声を出すことしか出来ないようだった。   それと同時に、声にならない謎の念波が、ちりちりと俺の脳みそを焦がしてくる。   痛い。吐き気もする。倒れそうになる。で

  • サトラレメイド   3章 14

     ともあれ、強敵だった鈴子さんとの戦いは終わった。俺たちは勝利したのだ。 「あと一歩だね、さつきさん」   さつきさんは嬉しそうにパナマ帽をあげて笑顔を見せつけてくる。 「はい、あと一歩ですね。それにしてもスカしてますね、誠二様は」 「嫌?」 「いいえ」   ああ、やっぱり彼女は素晴らしい。俺は微笑みを帰しながら、優しく囁く。 「さあ、市川家に戻ろう」 「あのクソ成金な大豪邸ですね。日本の住宅事情を考えると許せない……んっ!」    途端、さつきさんが胸を押さえながらうずくまりだした。 「え!? ど、どうしたのさつきさん!」 「う……あ……な、なに、これ……」   見える。これは――霊だ。あの時以来に見える、黒い影。それがさつきさんの背中からまるで醤油のシミのようににじみ出してくる。 「さつきさん! ん!? これは……」   だがあの時とは少し違う。影がどんどん濃く、大きくなっていくのだ。   俺は咄嗟に彼女を抱き上げる。 「祠の力、いや呪いが……さつきさん! 逃げよう!」   ――直後。 「ダメ、動けない! きゃああああああっ!」   ぐりん、と脳に異変が走った。 「遅すぎ……たの、か……?」   ひょっとしたらこんな日が来るのでは無いかと思っていた。いずれあるのではと。   でもまさか、こんなタイミングで来るとは予想もしていなかった。   それにサトラレの暴走とやらがこんな形になるなんてことも。 「あ、ああああああっ!」 (――――――――――――――)   さつきさんの心の声が聞こえない。代わりに送られてくるのは――念波。   脳をえぐるような異様な痺れが、俺の中に入り込んでいく。 「な、なんだ!? 脳に洪水みたいに……っ! なんだこれ」   たまらず、頭を押さえる。いや、俺だけじゃない。 「あ、兄者!」「誠二さん!」   この場にいる全ての人が、一様に同じ姿勢を取った。なんだこれは。 「みんな! くっ! これは……っ!」  

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    結果を言うなら、俺の圧勝に終わった。 「ふん、他愛もない」 「馬鹿な……」「なんだ、こいつ……」   俺はマントをばさっと翻し、駆ける。こんな雑魚どもの相手などしてられないのだ。 「さて、これはいかん。大遅刻だ。急がねば!」   とはいえこれではどう考えても間に合わない。家につくとしたら四時十五分、いや、下手したら四時半くらいになる。   ちらりと、道の端に自働電話が見えた。自働電話とは道ばたに設置されている電話のことで、お金を入れることで通話が出来るという画期的なサーヴィスである。雨宿りも出来るよう小型のボックスに包まれていて、至れり尽

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